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彼女の手紙




 黒崎くんへ



 あなたが最初に私に言ったとおり、私は偽善者です。
 あなたに会うまでの私は自分で作り上げた「善人の」自分に満足して、自己完結していました。だからあなたに「偽善」だと言われた時、ショックを受けました。今まで通り自分を肯定しようとする気持ちと、否定しようとする気持ちが交錯して、訳が分からなくなりました。

 あなたと交わるうち分かったのは、あなたの優しさでした。
 私がどんな言葉をぶつけてもあなたは聞いてくれた。私がどんな無茶を言ってもあなたは答えてくれた。でも、あなたが優しいのは、あなた自身の性格だったのに、それが私にだけ向けられた物だと私は錯覚していました。夢を見てしまったんです。自分を汚している相手に惹かれていました。あなたが、心の底から、好きでした。

 あの女の子と君が楽しそうに歩いているのをを見た時、私は混乱しました。
 現実を否定しきっていたあなたが、私以外の女の子に惹かれている。それが理解しがたかった。でも、あなたがオトモダチをやめようと言った時、私は全てを理解しました。
 私が黒崎くんを汚していたのだ、
 現実を肯定できていなかったのは自分だった、と。

 今更謝っても遅いことです。
 許してもらえないことだと思います。
 でも、謝らせて下さい。
 また偽善だとあなたは笑うかも知れません。
 でも、最期だから、これは偽善ではないと信じたいです。
 ごめんなさい。
 私のことを恨んで下さい。
 私のことを憎んで下さい。
 ごめんなさい。

 西野陽菜

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